日立CM「この木なんの木」の正体とは?ハワイ巨木の現在と名曲秘話
テレビをつければ誰もが一度は耳にし、思わず口ずさんだ経験があるフレーズ「この木なんの木 気になる木」。日立グループの企業CMとして半世紀以上にわたり放映され続ける「日立の樹」は、日本の広告史に燦然と輝く金字塔です。青空の下で圧倒的な存在感を放つあの巨木は、CGではなくハワイに実在する本物の樹木であることは広く知られていますが、その正確な樹種や樹齢、歴史の変遷や現地の現在の様子までを詳しく把握している人は多くありません。
時代が昭和から平成、令和へと移り変わるなかで、あの巨木とCMソングはなぜこれほどまでに日本人の心に深く刻み込まれてきたのでしょうか。本稿では、オアフ島に実在する巨木「モンキーポッド」の生態やモアナルア・ガーデンの最新現地状況、作詞作曲コンビが仕掛けた広告心理学の真髄、歴代歌手の変遷までを徹底取材の視点から紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「この木なんの木」の正体は熱帯アメリカ原産の「モンキーポッド(和名:アメリカネムノキ)」であり、ハワイ・オアフ島の「モアナルア・ガーデン」に実在する。
- 要点2:作詞・伊藤アキラと作曲・小林亜星の黄金コンビが手掛けた名曲は、あえて木の名前を伏せることで企業の多様性と成長性を表現し、朝倉理恵からINSPiまで歌い継がれてきた。
- 要点3:モアナルア・ガーデンは現在有料化(大人10ドル前後)されており、日立グループによる巨木の保全支援契約と現地マナーを正しく理解した上での訪問が不可欠である。
【正体を徹底解剖】「この木なんの木」の樹種・樹齢と驚異のスケール
CMに登場するあの雄大な樹木の正体は、マメ科ネムノキ亜科に属する熱帯性の落葉高木モンキーポッド(学名:Albizia saman / 和名:アメリカネムノキ)です。中南米原産でありながら、ハワイや東南アジアなどの熱帯・亜熱帯地域に広く移植され、街路樹や公園樹として親しまれています。
現地ハワイでは「レインツリー(Rain Tree)」とも呼ばれます。これは、雨が降りそうになると葉を閉じ、雨が上がると再び葉を開くという独特の性質に由来します。また、日の出とともに葉を開き、日没とともに葉を閉じる「就眠運動」を行う点も特徴です。春から秋にかけては、白とピンクの繊細なグラデーションが美しい、刷毛(はけ)のような形状の花を咲かせ、訪れる人々を魅了します。
ハワイ・オアフ島のホノルル近郊にある歴史ある公園「モアナルア・ガーデン(Moanalua Gardens)」に佇む日立の樹は、以下のような規格外のスケールを誇ります。
- 推定樹齢:約130年〜140年(19世紀後半に植樹)
- 樹高(高さ):約25メートル(ビル7〜8階相当)
- 枝の広がり(樹冠の直径):約40メートル
- 幹周り:約7メートル
大地にしっかりと根を張り、ドーム状に大きく広がった枝葉が巨大な木陰を作り出す姿は、自然の生命力と包容力を象徴しています。

日立グループCM「日立の樹」の歴史|歴代CMの変遷と歴代歌手の軌跡
1973年に放映を開始した日立グループの企業CM「日立の樹」は、50年以上の歴史を誇る長寿シリーズです。しかし、最初から現在のハワイのモンキーポッドが起用されていたわけではありません。歴代CMを振り返ると、時代ごとの企業戦略やクリエイティブの試行錯誤が如実に浮かび上がります。
実は、1973年の初代CMに登場したのは実写の木ではなく、イラストによるアニメーション画でした。巨大な総合電機メーカーとして幅広い事業を展開する日立グループの姿を「1本の木」に見立てるという構想からスタートしています。
実写の樹木が初登場した1975年の第2代CMでは、シンガポールにあるマンゴーの木がロケ地に選ばれました。現在おなじみとなっているハワイ・オアフ島のモンキーポッドが採用されたのは、1979年の第3代CMからです。その後、カリフォルニアのオーク(樫)の木や、ロサンゼルスのジャカランダ、ハワイ・カウアイ島の木などが起用された時期もありましたが、2005年の第9代CM以降は再びオアフ島のモアナルア・ガーデンにあるモンキーポッドへと回帰し、現在に至っています。
CMソング「日立の樹(この木なんの木)」を歌い継いできた歴代ボーカリストの系譜も多彩です。
- 初代(1973年〜):朝倉理恵(澄んだソプラノボイスが特徴)
- 第2代〜第4代(1975年〜1980年代):ヒデ夕樹、朝コータロー、シンガーズ・スリー(力強い男性ボーカルとコーラスの重厚感)
- 第5代〜第8代(1980年代後半〜1990年代):イングリッシュ・シスターズ(English Sisters / 透明感あふれる女性コーラス)
- 第9代以降(2005年〜現在):INSPi(インスピ / アカペラグループによる温かみのあるハーモニー)
時代とともにアプローチや編曲は変化しながらも、根底にあるメロディラインと歌詞の精神性は一切ぶれることなく受け継がれています。
作詞・伊藤アキラ×作曲・小林亜星が込めた「歌詞の意味」と制作秘話
「この木なんの木 気になる木 名前も知らない 木ですから 名前も知らない 花が咲くでしょう」
この極めてシンプルでありながら一度聴いたら忘れられない歌詞を手掛けたのは、昭和から平成にかけて数多のヒットCMソングを生み出した作詞家・伊藤アキラ氏です。そして、親しみやすく伸びやかなメロディを作曲したのは、日本の商業音楽界の巨匠・小林亜星氏でした。
当時の制作背景や関係者の証言によると、この曲には緻密な広告心理学と企業メッセージが込められています。当時、日立グループは家電製品から発電プラント、情報通信システムに至るまで多種多様な事業を展開する巨大コングロマリットへと急成長していました。しかし、一般消費者にとっては「日立が具体的に何を作っている会社なのか」を一口で説明するのが難しくなりつつありました。
そこで伊藤アキラ氏は、あえて「木の名前」を特定しない歌詞を着想しました。「名前も知らない木」でありながら、その枝には見たこともない花が咲き、実が結ばれる――。これは、日立グループが手掛ける無数の先端技術や製品群が、人々の見えないところで暮らしを支え、未来の豊かな実りをもたらしているというメタファー(暗喩)だったのです。
小林亜星氏によるペンタトニックスケール(ヨナ抜き音階)を巧みに取り入れた旋律は、世代や国境を超えて日本人の深層心理に心地よく響きます。「みんなが集まってくる木ですから」というフレーズには、企業と社会、人と自然が共生する温かな共同体意識が表現されており、高度経済成長から安定成長へと向かう日本社会の心情に見事に合致しました。

【現場取材データ】モアナルア・ガーデンの現在・行き方・入場料のリアル
ハワイ・オアフ島を訪れる日本人観光客にとって定番の観光スポットであり続けてきたモアナルア・ガーデンですが、近年その運営体制や利用環境には大きな変化が生じています。
かつては誰でも自由に立ち入れる無料の私有公園でしたが、現在は公園の維持管理および歴史的景観の保全を目的として有料化されています。所有者である現地法人の管理のもと、手入れの行き届いた芝生と安全な環境が維持されています。
2026年時点におけるモアナルア・ガーデンの基本情報および訪問時の実態データは以下の通りです。
- 所在地:2850 Moanalua Rd, Honolulu, HI 96819(ダニエル・K・イノウエ国際空港から車で約10〜15分、ワイキキ中心部から車で約20〜30分)
- 入場料:大人(13歳以上)約10米ドル/子ども(6〜12歳)約5米ドル/5歳以下無料(※現地窓口または公式オンライン予約にて決済)
- 開園時間:午前9:00〜午後4:00前後(祝祭日や天候により変動あり)
- アクセス手段:レンタカーやライドシェア(Uber / Lyft)、あるいはワイキキ発のオプショナルツアー利用が一般的。TheBus(市バス)でもアクセス可能ですが、最寄りのバス停からハイウェイ沿いを徒歩移動する必要があるため、安全面から車やツアーの利用が推奨されます。
園内にはギフトショップが併設されており、「この木なんの木」をモチーフにしたオリジナルグッズやハワイアン雑貨、日立の樹オフィシャル認定の記念品などが販売されています。芝生の上に座って巨木を見上げると、木漏れ日と心地よい風が吹き抜け、ワイキキの喧騒を離れた穏やかなひとときを体感できます。
【データ比較表】歴代「日立の樹」ロケーションと仕様の徹底比較
日立グループのCMで起用されてきた主な樹木とロケーションの変遷、およびそれぞれの特徴を一覧表で整理しました。
| 世代・放映年代 | ロケーション・樹種 | 歌唱アーティスト | 特徴・背景 |
|---|---|---|---|
| 初代(1973年〜) | イラストレーション(アニメーション) | 朝倉理恵 | 実写ではなく絵画表現。グループの総合力を1本の木で具現化。 |
| 第2代(1975年〜) | シンガポール(マンゴーの木) | ヒデ夕樹、朝コータロー ほか | 初の実写化。南国の力強い生命力を前面に押し出した映像。 |
| 第3代〜第5代(1979年〜1980年代) | ハワイ・オアフ島(モンキーポッド) | ヒデ夕樹/イングリッシュ・シスターズ | 現在のシンボルツリーが初登場。「この木=ハワイ」の印象を確立。 |
| 第6代〜第8代(1989年〜2000年代初頭) | アメリカ本土オーク/ハワイ・カウアイ島など | イングリッシュ・シスターズ ほか | グローバル展開を意識し、世界各地の個性ある名木を順次起用。 |
| 第9代〜現在(2005年〜) | ハワイ・オアフ島(モアナルア・ガーデン) | INSPi(インスピ) | 視聴者の親しみが最も深いオアフ島の木へ回帰。独占契約のもと保全。 |

一般に知られていない盲点とネットの誤解
「この木なんの木」に関しては、長年にわたる知名度の高さゆえに、インターネット上でもいくつかの誤解や都市伝説が語られてきました。ここでは現地調査と公式発表に基づく3つの真実を明らかにします。
誤解1:モアナルア・ガーデンにある大きな木はすべて「日立の木」である?
広大なモアナルア・ガーデンには、実はモンキーポッドの巨木が何本も自生しています。そのため、訪問者のなかには別の木を「日立の樹」と勘違いして記念撮影をして帰ってしまうケースが後を絶ちません。日立のCMで実際に撮影されている木の前には、公式の案内表示板が設置されており、樹形(枝振りの左右対称の美しさ)が際立っているため、案内板を目印に確認することが大切です。
誤解2:「契約終了により伐採される」という噂の真相
過去にネット掲示板やSNS上で「日立が契約を解除したため木が切り倒されるのではないか」といった噂が流布したことがありました。しかし、これは明確な誤情報です。日立グループはモアナルア・ガーデンを所有する現地企業と専属的な撮影権・商標利用に関するライセンス契約を締結しており、多額の保全費用(年間数十万ドル規模)を拠出して公園の環境保全に貢献してきました。歴史的資産としての価値が国際的に認められており、伐採されるような事実は一切ありません。
誤解3:日本のネムノキと同じ植物である?
モンキーポッドの和名は「アメリカネムノキ」ですが、日本国内の本州や四国に自生する「ネムノキ(Albizia julibrissin)」とは同属の別種です。日本のネムノキは樹高6〜10メートル程度の中高木ですが、熱帯性のモンキーポッドは20〜30メートル級の巨木へと成長し、葉の形状や傘の広がり方にも明確な違いがあります。
【プロの結論】ブランディングの視点から紐解く普遍的価値とハワイ訪問時の判断基準
企業が発信する広告コミュニケーションにおいて、50年以上にわたり同一のモチーフと楽曲を使い続ける事例は世界的に見ても極めて異例です。日立グループが「日立の樹」を守り続けてきた背景には、単なる知名度維持を超えた高度なコーポレート・アイデンティティ(CI)戦略が存在します。
短期的な製品スペックや価格訴求の広告は時代とともに消費され忘れ去られますが、「大樹」という普遍的な自然のメタファーは、企業の安定感、環境への配慮、そして社会インフラを支える責任感を無意識のうちに消費者の深層心理へ定着させます。このブランディング手法は、現代のESG経営やサステナビリティ発信の先駆けであったと言えます。
【プロの結論】モアナルア・ガーデン訪問をおすすめできる人・慎重になるべき人
ハワイ旅行の限られた日程のなかでモアナルア・ガーデンを訪れるべきかどうかは、旅行の目的によって明確に分かれます。
- 強くおすすめできる人:
- 日本のテレビ文化や名作CMの聖地巡礼をリアルに体感したい人
- 青空と圧倒的な緑が広がる開放的な空間で、記念撮影やピクニックを楽しみたい人
- レンタカーを利用してオアフ島西海岸やノースショア方面へドライブする途中で立ち寄りたい人
- 慎重に検討すべき人(おすすめしにくい人):
- ワイキキ周辺でのショッピングやマリンアクティビティを最優先したい短期滞在(3泊5日など)の人
- 移動手段が公共交通機関(TheBus)のみで、炎天下での徒歩移動や乗り換えに不安がある人
- 「広大な植物園やアトラクション施設」を期待しており、公園と巨木だけのシンプルな環境では満足できない人
【この木なんの木】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:モアナルア・ガーデンへの入場料はいくらですか?予約は必要ですか?
A1:一般入場料は大人(13歳以上)10米ドル前後、子ども(6〜12歳)5米ドル前後となっています。個人で訪問する場合は原則として予約なしで当日窓口での支払いが可能ですが、営業時間や休園日が天候・イベント等により変更される場合があるため、訪問前に公式ウェブサイトで最新情報を確認することをおすすめします。
Q2:あの木に花が咲く時期はいつ頃ですか?
A2:モンキーポッドは主に5月から10月頃にかけて、ピンクと白のグラデーションが美しい糸状の花を咲かせます。年間を通じて温暖なハワイでは時期が前後することもありますが、初夏から秋にかけて訪れると可憐な花を観察できる可能性が高まります。
Q3:なぜ日立はCMソングで木の名前を言わないのですか?
A3:作詞家の伊藤アキラ氏と日立グループの意図により、「名前を知らない多様な花や実がつく木」=「人々の暮らしを陰で支える日立の多彩な事業・技術・人材の集合体」というメッセージを込めているためです。あえて名前を伏せて好奇心を刺激する仕掛けが施されています。
Q4:個人でTheBus(市バス)を使って行くことはできますか?
A4:アラモアナセンターなどから出発する市バス路線でアクセス可能ですが、最寄りのバス停から公園入口までは交通量の多い道路沿いを歩く必要があります。利便性と安全性を考慮すると、レンタカー、タクシー、Uber等の配車アプリ、またはオプショナルツアーの利用が推奨されます。
まとめ:時代を超えて息づく巨木と名曲が語りかけるもの
「この木なんの木」というワンフレーズは、単なるCMソングの枠組みを超え、世代を超えて共有される日本の文化的記憶となりました。ハワイ・オアフ島の大地に根を下ろすモンキーポッドは、風雨に耐えながら今日も青空に向かって枝を広げ、訪れる人々を温かく迎え入れています。
あえて正体を明かさず「気になる木」と問いかけ続けるクリエイティブの妙味と、その木を守り続ける企業と現地の絆。次にテレビでこのメロディを耳にしたとき、あるいはハワイの澄み切った空の下であの大樹を見上げたとき、その背景に流れる豊かな歴史の息吹をより深く感じ取ることができるはずです。 (出典: この 木 なん の 木(Yahoo!ニュース))